ミリオンセラー今昔物語

  昨今のCD売上って、やっぱり落ち込んでるんですかね?まあ不景気だから仕方ないでしょう。どの業種も減収であえぐ中、音楽業界だけが安定した売上を確保できるはずはありませんから。

  ミリオンセラー、百万枚以上の売上を記録するっていうのは業界にどんな効果をもたらすんでしょうね?現在の日本の人口が約1億3千万人だから、すごいことなんだというのは分かりますが。担当プロデューサー/ディレクターに金一封とかあるのかな?それならみんな躍起になるのも頷けます(笑)。先日某TV局で起こった不祥事のように、売上操作のための買収などが起こらないことを祈ります(って、発覚してないだけで実際には行われているのかも・・・?)。

  何と言ってもダントツは「およげ!たいやきくん」の453万枚。・・・。言葉を失います。2位はぴんからトリオ「女のみち」の325万枚。3位は何だと思いますか?「だんご3兄弟」の291万枚。これも納得。で、最初のミリオンセラーは1968年のザ・フォーク・クルセイダーズ「帰って来たヨッパライ」。「オラは死んじまっただ〜」ってヤツですね。1984年の細川たかし「矢切の渡し」以来久しく出てなかったミリオンヒットを久々に更新したのが1989年の長渕剛「とんぼ」でした。調べてみると「帰って来たヨッパライ」から数えて20年間で40曲ほどしか存在していないので、当時ミリオンヒットは希なものだったと思われます。それが現在何と237曲もあるのです。13年間で約6倍近くに増えています。ゲッッ!

  僕が20代を過ごした1990年代はミリオンセラーが続出した時期でした。1990〜1999年(発売された年ではなく、ミリオン達成の年)の間に生まれたミリオンセラー・シングルは何と172曲!年平均17曲、歴代のミリオンセラーの実に7割強を占めます。これはすごい。アルバムの方は160タイトル以上。数字だけ見てるとクラクラしてきます。バブル経済がはじけた1992年以降に多くのヒットが生まれているのも面白い現象です。

  シングル曲のほとんどはTV番組・映画の主題歌、TV-CFソングなどのいわゆる「タイアップ作品」。僕が学生の頃にもそうしたヒット曲はありましたが、まだまだ純粋に歌手の人気によるヒット曲が多かったように思います。この動きに火を点けたのは何と言っても「東京ラブストーリー」主題歌、小田和正の「ラブストーリーは突然に」と「101回目のプロポーズ」主題歌、チャゲ&飛鳥の「SAY YES」でしょう。どちらも250万枚を越える特大ヒットでドラマも大ウケ。このおかげで、「この手法は使える!」と思い込んでしまった業界関係者が多くいたのではないでしょうか?それまでは地道にキャンペーンとかやってたのが、タイアップを取るのに必死になったり。まあ、それが諸悪の根元とは言いませんが。そういえばBLUE ANGELとMAGICはタイアップ多かったですよね。浦江嬢や上澤津氏がTVドラマに出演したり。そういうプロモーション方針だったのでしょう。

  ミリオンセラーの数は2001年から減少傾向になり、2002年に至っては浜崎あゆみの「H」のみ。不景気に加えて、携帯電話の普及も売上減少の要因の一つでしょう。CDの主な購買層である10〜20代への普及率が高く、通話料捻出のためCDなんて買ってられない、といったところでしょうか。しかしそんな世間の情勢を全く無視し、「CD売上減少の原因は、違法コピーだ」との見解から、PC環境(CDレコーダーも該当)でのコピーを防止する機能の付加された盤が売り出される始末。

  百万枚以上売れても人々の記憶から忘れ去られる曲もあれば、そこまで売れなくてもいつまでも人の心に残る曲もあります。以前は両方を兼ね備えた「いつまでも人の心に残る大ヒット曲」が確かにあったはずなのに。最近でこれに当たるのは、サザンオールスターズの「TSUNAMI」とSMAPの「世界に一つだけの花」くらいでしょうか。あなたが今持っている曲/新しく買った曲、10年後、20年後にも今と同じ気持ちで聴けますか?まあ、その頃にはそのCDも耐用年数が経過して聴けなくなっているかもしれませんが・・・。


(2003.12.12)


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